もしも、工事現場で発注者が適切な指示をせずに事故が起こった場合、発注者も損害賠償責任を負う事になるのでしょうか?請負業者にも、当然落ち度がでてきますが発注者が必要な情報を提供せず適切な指示をしなかった事で事故が起こった時の責任の有無について見てみましょう。
【発注者にも責任が問われるケース】
発注者が、専門的知見を有しており事故の発生や危険性がある程度予見できたにも関わらず情報の提供を怠った場合は発注者にも損害賠償責任が問われる事があります。発注者に責任が生じるケースとして、主に下記のような場合があります。
(請負業者の法的責任)
請負業者に施工ミスがあった場合、元請業者は被害者に対して損害賠償責任を負い刑事責任のほか刑法上の業務上過失致死傷罪が問われる事があります。
【実際の判決例】
実際に発注者にも責任があると認めた裁判例があります。これは、ある小学校の敷地造成工事中に地山が一部崩壊したことによって作業員が圧死するという事故が起こりました。発注者である町は、請負人に対して危険回避の為の工事方法を限定したり、工事条件を付けたり、そのほかの措置を怠ったとして賠償責任を負うとした判例です。このような公共工事においては、民間よりも発注者の監督員に専門的知見があると考えられある程度事故の予見ができたと認められた判例でした。この判例からもわかるように請負業者が、法的責任を負うからと言って発注者は必ずしも責任を負わなくてもよいという結論には至りません。
【未然防止策】
元請業者としては、現場の安全管理については勿論ですが事故を未然に防ぐには現地の地盤調査や作業員の安全確保に関する情報を有している発注者の協力が必要になってきます。発注者も、現場に対して事故が起こるリスクが感じられる場合や、持っている情報などは請負業者に提供しなくてはいけません。事故や災害を未然に防ぐ為にも発注者と、請負業者のよりよい信頼関係とコミュニケーションが重要になります。
【まとめ】
ひとたび、工事事故が起きたら請負業者だけでなく、場合によっては発注者にも責任の有無が問われる事になります。発注者は、事前に予見できる事故のリスクや、地盤調査の結果など持っている情報のすべてを開示し悲惨な事故を未然に防ぐ努力をしなくてはいけません。もし、これらを怠った場合には発注者も刑事責任や、業務上過失致死傷罪が問われる事もあるという事を十分理解しておきましょう。