工場内で爆発事故が起き火災が発生した場合には、工場の修復や復旧の為に最低数週間はかかるでしょう。このような火災が起こった場合に、経営者は従業員に対して何らかの補償を行う必要があるのでしょうか?また火災が起きた場合に、経営者が負うべき責任などについて見ていきましょう。
【賃金支払い義務】
工場が、火災に遭った場合従業員は復旧までの期間工場で働く事ができません。企業が日給月給制の場合は、通常休んでいる間の給料は支払われない事になります。このような場合、会社に賃金支払い義務はあるのでしょうか?民法536条では、以下のように規定されています。会社が労務提供をしなかった場合、原則として労働者は賃金を受ける権利を失いますが、それが会社の責任であった場合賃金の全額を請求できることになります。民法536条には「会社の責に帰すべき事由」とあります。これは会社の故意、過失、または信義則上これと同視すべきものか」どうかが問題になります。
【企業が負う補償】
企業が、法令に基づき防火体制をしっかりと取っており、防火体制も機能していた等の事情があれば会社の過失や同視すべき事由はないと判断され従業員に対する賃金の支払い義務はありません。しかし、次のような場合労基法26条の規定によって休業手当の支払い義務が発生する場合があります。使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は休業期間中当該労働者に対して、平均賃金の6割を支払わなければならない事になっています。労基法は、民法上の使用者の責に帰すべき事由よりも概念が広く経営者として不可抗力を主張し得ないすべての場合と規定されています。
【近隣の建物に被害が及んだら】
もしも、自社工場の火災によって近隣の建物に被害が及んだら企業はどのような責任を負うのでしょうか?個人宅の火災の場合、民法409条の失火法が適用される為、近隣の建物に対して賠償責任を負う事はありません。しかし、工場などでは電力や動力の規模が一般家庭よりも非常に大きくなっており、取り扱いは慎重にしなければなりません。工場内で起きた火災の場合は、失火法は適用されず、不法行為にあたる為賠償責任を問われる事になるでしょう。
【まとめ】
ひとたび、工場内で火災が起こると企業は、従業員、取引先、販売先、会社に対する様々な責任を負う事になります。火災や、爆発事故が起きないように日ごろから安全管理を徹底するとともに、万が一事故が起こった時の多額の賠償金のリスクにも備えておく必要があります。