すっかりグローバル化した経済状況の中、変化し続けるビジネスの機会を見失わないように、役員はその複雑で高度な職務に専念することが求められます。
しかし平成5年に商法が改正され、役員の責任を追求する「株主代表訴訟」が多数起きるといった役員の訴訟リスクは拡大されつつある状況です。
訴訟を意識し過ぎてしまえば保守的な経営判断に偏らせることになり、せっかくのビジネスチャンスを失い企業の発展や活性化にも支障をきたすとも考えられます。
そのため役員個人が抱える賠償リスクとはどのような内容なのか、実際にリスクが発生した時にどのような事態に陥ってしまうのかなど確認しておきましょう。
株主から訴訟を提起される可能性
役員が法律に従って誠実に業務を執行したとしても、その結果次第で株主から訴訟を提起される可能性もあります。
株主が役員に対して個人責任を問う「株主代表訴訟
が起き、仮に役員が敗訴すれば自己の財産から損害賠償金を会社に支払う必要が出てくるでしょう。
反対に訴訟に勝訴した場合でも、弁護士費用までは原告側に求償できず、役員が自己負担する必要が出てきます。
直接行為に関与してなくても責任追求されることがある
役員が直接違法行為に関与していなかったとしても、監視義務違反を理由に他の役員の行為に連帯して責任を追求されるケースもありますし、役員が職務執行に関連して、従業員や取引先、地域住民など第三者から個人的な責任追求を受けるといったことも考えられます。
退任後まで責任を追求される?
役員が在任中している間の行為については、損害発生から10年間は損害賠償請求される可能性があると考えておく必要があります。
退任した後でも責任を追求される可能性があるので、安心できません。
また、訴訟が提起されて判決が確定しない間に役員が亡くなった場合、争訟費用や敗訴した場合の損害賠償金は相続人が負担することになってしまいます。
訴訟から判決までの経済的負担
訴訟が起きた場合、判決まで長い時間が掛かるため、その期間中の弁護士費用や争訟費用は負担になると認識しておく必要があります。
勝訴すれば良いという問題ではなく、経済的にとても大きな負担が掛かることになるはずです。
株主代表訴訟によって役員が訴えられても、勤めている会社と相反する立場にある役員は会社の顧問弁護士を頼ることはできません。
情報収集を行う際にも、会社の従業員を使うことはできないのです。
役員の賠償リスクに備えるためには?
このような役員の賠償リスクに対応するため、会社が契約者、役員が被保険者となる「会社役員賠償責任保険(D&O保険)」で備える方法を検討しましょう。
役員の行為によって被る損害をカバーするための保険ですので、役員などが直面する損害賠償リスクに備えることができ、経営に専念してもらうことが可能です。
保険契約を継続している間は、役員が退任した後の責任、相続人の負担、弁護士費用など訴訟費用についても継続して補償されますし、免責条項に該当しなければ紛争の解決に先立つ争訟費用を受取ることができます。
上場企業のほとんどが加入しており、今後さらに重要性が増す保険だと言えますので、まだ加入していない企業は検討することが必要です。